歳月列車

米国での日常、そして、忘れえぬ日本の思い出

神戸・阪神間の思い出

三ノ宮再開発と駅前風景の均質性

この夏の一時帰国時、いつものように三ノ宮・元町界隈をぶらぶらしていたのだが、JR三ノ宮の駅前にあったターミナルホテルが取り壊されて、完全に更地となっていることに気づいた。あのホテルは、僕が物心ついたときからあって、1階の喫茶店は待ち合わせや休…

ハーバーランドとメトロこうべ、今昔

早朝のハーバーランドです 5月に日本へ一時帰国したとき、JR神戸駅近くのホテルに一泊した。普通なら実家に泊まるので神戸で宿を取ることなんてないのだけど、今回はやむを得ない事情があった。せっかくなので三ノ宮か元町あたりで泊まれたらと思ったが、直…

元町商店街と丸善の思い出

JRの元町から鯉川筋を海に向かって南へ歩いていくと、左手(つまり東側)には大丸が、右手(つまり西側)には元町商店街の入り口がある。元町1丁目交差点のこの辺りは、港町神戸の中でも最も神戸らしい風景のひとつだと思う。 元町は、子供のときから僕の大…

阪神御影―旨水館と御影クラッセ―

神戸及び阪神間で御影というと、富裕層に属する人々の豪勢なお屋敷が立ち並ぶ阪急の御影が想起されることが多いと思うが、今日僕が話したいのは阪神電車の御影の方だ。こちらは、阪急から南へ1キロちょっと下ったところにあり、歩くと15分ちょっとはかかる…

「母と歩いた市場への道」

今年78になる母が2ヶ月ほど入院していたのだが、先日ようやく退院した。背骨と肋骨が折れており、その治療のためだった。こけたとか、何かにぶつかったとかいう明確な事件があったわけではなく、長引く腰痛だと思って整形外科を受診したところ、体の両面に骨…

弓弦羽神社の桜を思う

20年以上前の写真が出てきました 今年は春の訪れが早い。米国東部のこの街に越してきて今年で7年目だが、雪が降らなかった冬は初めてじゃないだろうか。2月の終わりからどんどん気温が上がって、いつもなら3月の中頃に見頃になるマグノリアと洋梨の花が、今…

阪急岡本の思い出

僕の住む米国東部のこの街も、最近は寒さが和らぐ日があって冬の終わりが近づいていることを感じる。先日の夕方、柴犬くんとの散歩の途中、そろそろ沈丁花の季節だなと思いながら歩いていると、奇遇にもあの甘い香りがただよってきて、思いもかけない場所で…

カムアウトと夙川の思い出

去年の暮の一時帰国の際に、例によって例のごとく、普段は一人暮らしで話し相手のいない母から日々のよしなしごとをあれやこれや聞かされていたとき、ふとしたきっかけで、自分の性的指向(つまり、自分がゲイであるということですね)について両親にカムア…

帰らない時間、あの頃の僕

時間の不可逆性、つまり、過ぎた時間は二度と帰ってこない、という当然のことを5年ほど前、40代なかばに差しかかった頃から真剣に考えるようになった。それまでは、仕事においても私生活においても、失敗しても、寄り道しても、立ち止まっても、ま、何とかな…

神戸、1993年の寒い夏

最近は地球温暖化の影響もあって、毎年夏が異常に暑い。僕の住む米国東部の街でも、35度くらいまで上がる日がけっこうあって、そういう日は心も体もげんなりしてしまうし、我が家の柴犬くんも散歩に行ってくれない。しかし、ここに長く住んでいる人に聞くと…

亡き父のこと、神戸湊川のこと

2年5ヶ月ぶりの一時帰国から米国に戻ってきて、もうすぐひと月になるのだが、いろいろ思うところがあり、それらの感情とどう向き合えばよいのか分かりかねる時がある。夕方、少なくとも5時までは普通に仕事をしていて、それは、精神の集中というか、自分の社…

ああ、高架下(神戸元町)

元町高架通商店街、モトコーは、JRの元町駅から神戸駅の間の高架下にある商店街。僕たちは、子供の頃は単に「高架下」と呼んでた。高架下といえば、JRの三宮から元町にかけての高架下にも商店街があるが、今日は、元町〜神戸の高架下の話。敗戦直後の闇市に…

思い出の塩屋

塩屋は、神戸市垂水区の海沿いの町。JRと山陽電車の駅が隣同士にある。JRは新快速はもちろん、快速も通過してしまう。神戸や明石以外の人にとってはあまり馴染みのある場所ではないと思う。 前回の日本滞在中、例によって例のごとく、湊川・新開地界隈をぶら…

幻想の関西

前回日本へ行ったのがパンデミックの始まる直前、2019年の12月だった。ひと月後には2年5ヶ月ぶりの一時帰国が迫っているが、現実感がわかない。日本への国際線のフライトは今だキャンセルや変更が続出しているのは、海外在住者の間ではよく知られており、自…

イカナゴのくぎ煮

僕の住むこの街では、ここ1週間くらいで気温が急上昇、にわかに春らしい天気になってきた。 というわけで、イカナゴの季節だ。神戸・明石近辺では、イカナゴの稚魚を醤油とザラメで甘辛く炊いた「くぎ煮」は春の風物詩で、物心ついた時分から、毎春、祖母も…

新神戸と旅の思い出

JR新神戸は在来線と接続のない新幹線専用の駅で、しかも、三宮・元町の繁華街から微妙に離れているので、ふらっと立ち寄ったり、という経験はあまりなく、僕にとっては、もっぱら長距離の旅の玄関口という意味合いが強い。なので、新神戸にまつわる思い出も…

新長田と父の思い出

新長田は、神戸の繁華街三宮から西へおよそ6キロ、味わい深い商店街の町だ。三宮・元町より西は、観光目的で神戸に来る人ならあまり出向かないだろうが、新開地・湊川、長田、新長田、板宿、と個性的な下町が続く。新長田は、同時に、先の震災で最も壊滅的な…

春日野道の友だち

阪急春日野道 春日野道は、神戸の中心部、三宮のすぐ東隣の町。山側に阪急春日野道駅、海側に阪神春日野道駅がある。三宮から西は元町〜JR神戸、と繁華な商業地区が続くのに対して、東の春日野道は、いくつかの活気ある商店街を抱える下町的な町だ。 大学1…

神戸メリケンパーク

小さい頃から港に対する憧れが人一倍強かった。港や波止場や埠頭や船にまつわる映画を観たり小説を読んだり歌を聞いたりすると何だか体がゾクゾク、心がソワソワして、いまだ見たことのない海の向こうの街と人に対する好奇心が刺激された。アメリカに来て初…

ああ、新開地

新開地は、神戸近辺以外の人にはあまり馴染みのない場所かもしれないが、戦前の神戸の中心地。映画館や芝居小屋、飲食店の密集する、関西随一の繁華街だった。戦争中の空襲で焼かれ、戦後は少し東の三宮へ人の流れの中心が移っていった。 新開地とは子供の時…

摂津本山に暮らした日々

もう20年ほど前、仕事を始めてからまだ間もない頃、この駅から徒歩10分ほどのところで一人暮らしをしていた。実家から大学に通っていた僕にとっては、これが初めての一人暮らしだった。給料は安く、住まいは小さかったが(20平米ほどのワンルームで、確か家…