風歩きの雑記帳

米国での日常、そして日本の思い出

ポートライナーにあこがれた頃

5月に日本へ一時帰国した際、三宮で所用があり出かけていった。阪急百貨店――「そごう」と言ったほうが今でもしっくりくるのですが――からJRの方へ鉄橋を渡っていると、ポートライナーの三宮駅が視界に入って、そこで、最後にポートライナーに乗ったのってい…

西東三鬼『神戸・続神戸・俳愚伝』について

このブログでは、いかに神戸が好きかということをしつこく書いており、また、数ある神戸の都市空間の中でも、特に新開地や元町が好きだということも何度も書いている。無機質で均質的な郊外のニュータウン(今や完全にオールドタウンとなってしまいましたが…

シャーロッツビル――ちょっと素敵な大学町

アメリカには、いわゆるカレッジタウン(college town)、つまり、大学町なるものが全国津々浦々にある。町の人口の大半を学生や教員などの大学関係者が占め、大学と経済的に深く結びついている町、ちょっと意地悪な言い方をすれば、大学以外には何もない町…

母という生き方

母が骨粗鬆症による骨折で長期入院していたことは以前書いたが、今は自宅に戻っている。通院は続けているが、入院時と比べると見違えるほど元気になっている。退院後にひと月ほど滞在した高齢者施設がとても気に入って、今でも週一で通っており、それが楽し…

岩屋商店街と資本主義をめぐって

日本へ一時帰国すると、たいていは滞在の半分を大阪・神戸で、もう半分を東京で過ごしている。現在、僕の住む米国の東側からは関空への直行便がないので、ワシントン―羽田というルートを使っているので、日本滞在の始めと終わりが東京、その間が関西という日…

住吉川と望郷の念

前回の投稿から1年近くも経ってしまった。あまりに忙しすぎたとか、書くネタがつきたとかそんなわけでは決してない。書きたいことはあるのだが、なんとなく体がだるく、時間ができると書くという能動的な行為よりは、ユーチューブやネットフリックスを見たり…

三ノ宮再開発と駅前風景の均質性

この夏の一時帰国時、いつものように三ノ宮・元町界隈をぶらぶらしていたのだが、JR三ノ宮の駅前にあったターミナルホテルが取り壊されて、完全に更地となっていることに気づいた。あのホテルは、僕が物心ついたときからあって、1階の喫茶店は待ち合わせや休…

ボブ・グリーン『1964年春』を読み返す

去年の夏、父の死以来はじめて一時帰国したのだが、実家には、若いときから父が愛読していた多くの本が本棚に並んでいた。それは今も変わっていない。父の持ち物の処分は少しずつ始めているのだが、本は父が長い年月をかけて買い集めたものなので、母もそう…

伊香保(あるいは、つげ義春的露天風呂)

伊香保温泉は、文学や映画にたびたび登場して、例えば林芙美子の『浮雲』やその映画版などは繰り返し読み、観ているので、若い頃から一度行ってみたいと思っていた。が、一度も行く機会を得ないまま渡米してしまった。もちろん、定期的に一時帰国はしていた…

ハーバーランドとメトロこうべ、今昔

早朝のハーバーランドです 5月に日本へ一時帰国したとき、JR神戸駅近くのホテルに一泊した。普通なら実家に泊まるので神戸で宿を取ることなんてないのだけど、今回はやむを得ない事情があった。せっかくなので三ノ宮か元町あたりで泊まれたらと思ったが、直…

四谷・鈴傳で十四代を飲む

四谷の駅から新宿通りを四谷三丁目へ向かって歩き、左へちょっと折れたところに鈴傳(すずでん)という酒屋があって、そこには角打ちができる「スタンディングルーム鈴傳」が併設されている。東京のど真ん中にいるのを忘れてしまうほど安価で色々なお酒が楽…

さよなら日本、また会う日まで〜2023年夏〜

日本への一時帰国がついに終わり、帰りの飛行機でこれを書いている。3週間ちょっとの滞在だったが、いつものことだが、あっという間だった。今回は、来日初日からぎっしり予定を入れすぎており、その疲れが出たのか、大阪滞在中に体調を崩してしまい、北浜…

元町商店街と丸善の思い出

JRの元町から鯉川筋を海に向かって南へ歩いていくと、左手(つまり東側)には大丸が、右手(つまり西側)には元町商店街の入り口がある。元町1丁目交差点のこの辺りは、港町神戸の中でも最も神戸らしい風景のひとつだと思う。 元町は、子供のときから僕の大…

そして、誰もいなくなる

職業柄、4月は非常に忙しく、特に今年は会議やら採用の面接やらが重なって、自分のオフィスで仕事を片付ける暇がなかなか見つけられず、時間だけがどんどん過ぎていく。しかも、今日は土曜だというのに、夕方から年度末のパーティーがあるので、少々気が重い…

阪神御影―旨水館と御影クラッセ―

神戸及び阪神間で御影というと、富裕層に属する人々の豪勢なお屋敷が立ち並ぶ阪急の御影が想起されることが多いと思うが、今日僕が話したいのは阪神電車の御影の方だ。こちらは、阪急から南へ1キロちょっと下ったところにあり、歩くと15分ちょっとはかかる…

「母と歩いた市場への道」

今年78になる母が2ヶ月ほど入院していたのだが、先日ようやく退院した。背骨と肋骨が折れており、その治療のためだった。こけたとか、何かにぶつかったとかいう明確な事件があったわけではなく、長引く腰痛だと思って整形外科を受診したところ、体の両面に骨…

弓弦羽神社の桜を思う

20年以上前の写真が出てきました 今年は春の訪れが早い。米国東部のこの街に越してきて今年で7年目だが、雪が降らなかった冬は初めてじゃないだろうか。2月の終わりからどんどん気温が上がって、いつもなら3月の中頃に見頃になるマグノリアと洋梨の花が、今…

阪急岡本の思い出

僕の住む米国東部のこの街も、最近は寒さが和らぐ日があって冬の終わりが近づいていることを感じる。先日の夕方、柴犬くんとの散歩の途中、そろそろ沈丁花の季節だなと思いながら歩いていると、奇遇にもあの甘い香りがただよってきて、思いもかけない場所で…

名古屋へ―旧友との再会―

大学は地元関西だったけど、学生は全国津々浦々からやってきていて、その中でも僕の周りには名古屋圏からの友人がけっこう多かった。そんなこともあって、学生時代から名古屋方面にはけっこう行っていて、神戸や大阪や東京ほどではないが、それなりに親しみ…

カムアウトと夙川の思い出

去年の暮の一時帰国の際に、例によって例のごとく、普段は一人暮らしで話し相手のいない母から日々のよしなしごとをあれやこれや聞かされていたとき、ふとしたきっかけで、自分の性的指向(つまり、自分がゲイであるということですね)について両親にカムア…

帰らない時間、あの頃の僕

時間の不可逆性、つまり、過ぎた時間は二度と帰ってこない、という当然のことを5年ほど前、40代なかばに差しかかった頃から真剣に考えるようになった。それまでは、仕事においても私生活においても、失敗しても、寄り道しても、立ち止まっても、ま、何とかな…

横浜小旅行

前回の記事で、いかに望郷の念が強いかということを書いたが、日本のことについて書いていると少しではあるが精神の平和が保てることが分かったので、続けて投稿。今日は横浜のお話。 東京から横浜までは、JRの新宿から横浜までが30分ほど、東急の渋谷から元…

望郷、あるいは乱れる心

御堂筋は今年もきれいでした 明けましておめでとうございます。 前回の記事を書いてから実に4ヶ月以上の時が流れてしまった。夏の終りあたりから仕事がまた忙しくなり、11月の終わりの感謝祭までほぼ休みなしだった(といっても、オフィスに毎日行っていたわ…

過ぎゆく夏、パシフィック・コースト・ハイウェイ

晩夏だ。神戸も大阪もまだまだ暑いようだが、僕の住むこの米国東部の街は、暑さが少しではあるが、やわらぎつつある。朝晩は20度を切ることもあって、これだけ涼しいと柴犬くんも元気で、機嫌よく散歩に行ってくれるので、こちらもうれしくなる。 6月に日本…

神戸、1993年の寒い夏

最近は地球温暖化の影響もあって、毎年夏が異常に暑い。僕の住む米国東部の街でも、35度くらいまで上がる日がけっこうあって、そういう日は心も体もげんなりしてしまうし、我が家の柴犬くんも散歩に行ってくれない。しかし、ここに長く住んでいる人に聞くと…

ワシントンで帰宅困難者となる

私用でワシントンDCに行った。たいていは車で行くのだが、今回は一人だし、先の日本滞在中に列車旅の良さを再確認したこともあって、アムトラック(Amtrak、アメリカの国鉄です)で行くことにした。 気軽な日帰り旅のつもりで、朝、家を出、ワシントンで用事…

亡き父のこと、神戸湊川のこと

2年5ヶ月ぶりの一時帰国から米国に戻ってきて、もうすぐひと月になるのだが、いろいろ思うところがあり、それらの感情とどう向き合えばよいのか分かりかねる時がある。夕方、少なくとも5時までは普通に仕事をしていて、それは、精神の集中というか、自分の社…

ああ、高架下(神戸元町)

元町高架通商店街、モトコーは、JRの元町駅から神戸駅の間の高架下にある商店街。僕たちは、子供の頃は単に「高架下」と呼んでた。高架下といえば、JRの三宮から元町にかけての高架下にも商店街があるが、今日は、元町〜神戸の高架下の話。敗戦直後の闇市に…

思い出の塩屋

塩屋は、神戸市垂水区の海沿いの町。JRと山陽電車の駅が隣同士にある。JRは新快速はもちろん、快速も通過してしまう。神戸や明石以外の人にとってはあまり馴染みのある場所ではないと思う。 前回の日本滞在中、例によって例のごとく、湊川・新開地界隈をぶら…

さよなら日本、また会う日まで

今日の四谷 というわけで、日本滞在最終日。3週間はあっという間だった。今は羽田で搭乗待ちだ。 いつもデルタを使っているのだが、いつのまにか成田から撤退していて、今はすべてのデルタ便が羽田発着になっている。都心からは羽田の方が断然近いし、交通…