歳月列車

米国での日常、そして、忘れえぬ日本の思い出

2022-01-01から1年間の記事一覧

過ぎゆく夏、パシフィック・コースト・ハイウェイ

晩夏だ。神戸も大阪もまだまだ暑いようだが、僕の住むこの米国東部の街は、暑さが少しではあるが、やわらぎつつある。朝晩は20度を切ることもあって、これだけ涼しいと柴犬くんも元気で、機嫌よく散歩に行ってくれるので、こちらもうれしくなる。 6月に日本…

神戸、1993年の寒い夏

最近は地球温暖化の影響もあって、毎年夏が異常に暑い。僕の住む米国東部の街でも、35度くらいまで上がる日がけっこうあって、そういう日は心も体もげんなりしてしまうし、我が家の柴犬くんも散歩に行ってくれない。しかし、ここに長く住んでいる人に聞くと…

ワシントンで帰宅困難者となる

私用でワシントンDCに行った。たいていは車で行くのだが、今回は一人だし、先の日本滞在中に列車旅の良さを再確認したこともあって、アムトラック(Amtrak、アメリカの国鉄です)で行くことにした。 気軽な日帰り旅のつもりで、朝、家を出、ワシントンで用事…

亡き父のこと、神戸湊川のこと

2年5ヶ月ぶりの一時帰国から米国に戻ってきて、もうすぐひと月になるのだが、いろいろ思うところがあり、それらの感情とどう向き合えばよいのか分かりかねる時がある。夕方、少なくとも5時までは普通に仕事をしていて、それは、精神の集中というか、自分の社…

ああ、高架下(神戸元町)

元町高架通商店街、モトコーは、JRの元町駅から神戸駅の間の高架下にある商店街。僕たちは、子供の頃は単に「高架下」と呼んでた。高架下といえば、JRの三宮から元町にかけての高架下にも商店街があるが、今日は、元町〜神戸の高架下の話。敗戦直後の闇市に…

思い出の塩屋

塩屋は、神戸市垂水区の海沿いの町。JRと山陽電車の駅が隣同士にある。JRは新快速はもちろん、快速も通過してしまう。神戸や明石以外の人にとってはあまり馴染みのある場所ではないと思う。 前回の日本滞在中、例によって例のごとく、湊川・新開地界隈をぶら…

さよなら日本、また会う日まで

今日の四谷 というわけで、日本滞在最終日。3週間はあっという間だった。今は羽田で搭乗待ちだ。 いつもデルタを使っているのだが、いつのまにか成田から撤退していて、今はすべてのデルタ便が羽田発着になっている。都心からは羽田の方が断然近いし、交通…

四谷で我が家の柴犬くんを思う

今回の日本滞在もあと1週間足らずで終わり、来週の頭には米国東部のわが街へ帰ることになる。 今は東京で仕事をこなしており、宿はいつもの四谷だ。パンデミック以前は半年おきに来ていたので、変化があったとしても緩やかで、あくまで自分の想定内のことが…

北浜再訪

日本に来ている。2年5ヶ月ぶりの日本だ。6月から、米国からの入国者に対しては到着後のコロナ検査が免除となったので、入国は非常にスムーズだった。機内も快適でよく眠れた。ただ、米国を発つまでのひと月ほどは、自分の仕事人生でおそらく一番忙しかった期…

ゲッツ/ジルベルト

僕が思春期を迎えた頃というのは、貸しレコード屋なるものがまだ普通に存在していて、そこで様々なLPを借りてきてテープにダビングしたり、三宮や元町の中古レコード屋を物色したりして音楽を嗜んでいたわけだけど、高校へ入る頃になると、CDの勢いが急速に…

沖縄と父の思い出

死んだ父が夢に出てきた。僕は一時帰国中で両親の家に滞在しており、父と居間で普段どおりの会話をしている。最終的に父の命を奪うことになる病はまだそれほど進行してはいないようで、よく喋り、体も普通に動いている。と、唐突に「お前に会えるのもこれが…

幻想の関西

前回日本へ行ったのがパンデミックの始まる直前、2019年の12月だった。ひと月後には2年5ヶ月ぶりの一時帰国が迫っているが、現実感がわかない。日本への国際線のフライトは今だキャンセルや変更が続出しているのは、海外在住者の間ではよく知られており、自…

フィラデルフィア

フィラデルフィアは、米国東海岸の街で、ちょうどニューヨークと首都ワシントンDCの間に位置する。ロサンゼルスやサンフランシスコやニューヨークやDCと違って、日本の人にはあまり馴染みがないかもしれないが、市域だけでも160万の人口を抱える巨大都市。 …

復活祭のゆるい日曜

今日は復活祭、いわゆる「イースター」の日曜だった。敬虔なキリスト教徒の多いアメリカでは重要な祝日だ。復活祭は太陰暦をもとにした祝日なので、日付は年によって変わるが、たいてい4月中の日曜に当たるので、春の始まりともとらえられていて、キリスト…

阪急北千里

あいにく北千里の写真がなくて、これはひとつ手前の山田駅 阪急の千里線は、大阪のターミナル梅田と千里ニュータウンの中心駅のひとつ、北千里とを結ぶ典型的な郊外電車の路線だ。神戸線や京都線が都市間輸送の大動脈でほぼ一日中せわしないのに対し、千里線…

阪急茨木市駅

その昔、まだ神戸に住んでいた時分、茨木で仕事をしていたので、ここには週3回ほど通っていた。その仕事は常勤の仕事ではなかったので、それだけでは資本に管理・支配された社会で生存していくことは到底できず、午前中は神戸で仕事をして、午後に茨木へ駆…

高野豆腐賛歌

先週は相方が出張で留守にしており、柴犬くんと二人きりで濃密な時間を過ごしていたのだが、仕事がたまっていて気が重かった。仕事の性格上、オフィスでの拘束時間は短いのだが、締切が重なると週末も何もあったものではなく、家にいてもやることが次々と出…

大阪夕陽丘

子供の時分から地図とか電車の路線図とかを見て、まだ見ぬ場所についてあれやこれやと空想するのが好きだった。そんな空想旅行みたいなことをしていると、特に興味を惹かれる名前を持った場所に出会うことがあった。神戸〜大阪のあたりでは、たとえば、阪急…

東京四谷

長く閉ざされていた日本の国境が、3月になりようやく開き始めた。アメリカからなら、ワクチンのブースター接種済で到着時の待機期間なしとのことで、少しは一時帰国がしやすくなった。2年以上帰ってないので、もうそろそろ帰らねば。そんなわけで、今日、…

春の歌―伊勢正三、吉田拓郎、浜田省吾

桜ももうすぐだ 昨日の朝、この街は深い霧に覆われていて、我が家の柴犬くんの散歩の時間になっても、いつもの公園は朝もやに煙っていた。散歩を続けるうちに日が昇り、春らしい日差しが照り始めた。この公園では、今、マグノリアが満開で、その次が洋梨の白…

上高地の流れ星

出典:pixabay (https://pixabay.com/ja/photos/上高地-河童橋-梓川-日本-356968/) 僕の住むアメリカ東部の街は、決して大都会と呼べるほどの規模ではないが、それでも、日が暮れてから帰宅するときなど、高速の向こうに見えるダウンタウンのビル群は煌々と…

イカナゴのくぎ煮

僕の住むこの街では、ここ1週間くらいで気温が急上昇、にわかに春らしい天気になってきた。 というわけで、イカナゴの季節だ。神戸・明石近辺では、イカナゴの稚魚を醤油とザラメで甘辛く炊いた「くぎ煮」は春の風物詩で、物心ついた時分から、毎春、祖母も…

続サンディエゴの思い出

前回、渡米して最初に暮らした街サンディエゴについて書いたが、今日はその続き。彼の地には合計6 年ほど住んだのだが、今振り返ってみると、その6年間、あたかも同じ時間が何度も何度も繰り返し循環していたかのように、そこで経験した様々な出来事がごちゃ…

サンディエゴの思い出

アメリカに暮らしてもう20年になる。初めてこの国へやってきた時は、まさかこんなに長居するとは思いもせず、数年したら日本へ帰るつもりでいたのだが、どこで何が狂ってしまったのか。今では、この浮き草的、根無し草的――五木寛之氏風に言えば「デラシネ的…

早春の東京を思う

僕の住むアメリカ東部のこの街は、夏は長く蒸し暑く、冬は適度に寒く、気候的には関西や東京とよく似ている。2月はまだまだ冬だが、ときに寒さの緩む日もあり、今日、このブログの記事は、二階のバルコニーの椅子に腰掛けて書いた。頬に当たる風はまだ少し冷…

お酒と演歌とカントリーミュージックと・・・

日本の流行歌、特に演歌やムード歌謡の世界では、お酒を飲んだら昔を思い出して悲しくなって、というふうな、一人飲みの寂寥や憂いを歌ったものが実に多い。美空ひばりの「悲しい酒」なんて「ひとり酒場で飲む酒は別れ涙の味がする」と、冒頭からお酒飲んで…

新神戸と旅の思い出

JR新神戸は在来線と接続のない新幹線専用の駅で、しかも、三宮・元町の繁華街から微妙に離れているので、ふらっと立ち寄ったり、という経験はあまりなく、僕にとっては、もっぱら長距離の旅の玄関口という意味合いが強い。なので、新神戸にまつわる思い出も…

大阪 キャヴァーン・クラブ

ビートルズを本格的に聴くようになったのは、大学生になってからだった。以前にも書いたとおり、僕は、中学時代はサイモン&ガーファンクルや60年代アメリカのフォークソングに傾倒していて、高校に入ってからはビーチボーイズの『ペット・サウンズ』がお気…

福山の先輩、尾道への旅

高校時代に同じ部活に所属し、慕っていた先輩が広島は福山の大学に通っていた。90年代初頭のある夏、この先輩を訪ねて福山まで遊びにいった。電話で話していて、暇やったら遊びに来いやと言われ、明日はどない、という具合にトントン拍子に話が決まった。 神…

新長田と父の思い出

新長田は、神戸の繁華街三宮から西へおよそ6キロ、味わい深い商店街の町だ。三宮・元町より西は、観光目的で神戸に来る人ならあまり出向かないだろうが、新開地・湊川、長田、新長田、板宿、と個性的な下町が続く。新長田は、同時に、先の震災で最も壊滅的な…